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「しょうがない奴だな」
「那智くんはそんな事で悩んでたの? 介護士だっけ。それってだれかを笑顔にするのが仕事だよね。わたしはその、どんな仕事かわからないけど」
「まぁ、そうだけど」
ぼくはタバコに火を点けると、彼女は顔をムッとさせた。
「那智くんには、那智くんにしか出来ないことがあるんじゃないかな」
「例えば?」
「こうしてタバコがキライなわたしの前でタバコを吸うこと」一旦区切り続ける「それはそれとしてさ、こうして毎日ここでわたしとお昼食べてくれることとか、那智くんしかこういうことしないよ」
言われてみれば、彼女に毎日公園で食事を与えるひとは、ぼくみたいな人間くらいだろう。何時ものことなので、これが普通だと思っていたが、彼女から見れば特別なことだったのか。
「なる程な、そう言うお前も孤独だったんだろう」
「ねえ、孤独って、何?」
ぼくは彼女の一言にはっとして「それは......」と答えようとするが、彼女の姿はそこにはなかった。
何時の間にか現れて、何時の間にか消えていく、本当に自由な奴だ。一匹しかいなくとも、孤独を感じたことがないのだろうか。
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