2.奪われた日常

3/8
前へ
/126ページ
次へ
私は遊郭に売りに出されるしかないだろう。 一生かかっても出てこれないかもしれないが、私だけなら、もう、それでいい。 でも、園池の家には、母と弟が残っている。 母は実家に身を寄せられるだろうか。 父が連れていかれてからというもの、母は寝込んでしまっている。 弟は。 男とはいえ、好き者の家に売られるかもしれない。 それは耐えられない。 ふらりと、家から外に出る。 もう頼りに出来る所なんてない。 いや、あそこは頼りにしてはいけない。 そう、わかっているのに。 足が自然とそちらに向いてしまっていた。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

473人が本棚に入れています
本棚に追加