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イギリスからのお客様は、日本の華族や資産家との取引を望んでいるとのことだった。
かねてより依頼をしていた通訳が体調を崩してしまい、別の通訳を急遽探していたタイミングで、
由緒正しき久我家の紹介ということもあり、経験の無い千歳にお鉢が回ってきたのだ。
あぁ、緊張する。
麗斗、いや、久我家の顔に泥は濡れない。
明後日と迫ったパーティの為に、千歳は、想定される会話に備えて必死で準備をしていた。
本や資料を読み耽る中で、
出席者の名簿の一点で目が止まる。
近衛 華
そして、八神 志恩
華というのは、近衛家の娘だろうか。
一緒に来るという事は、何か、特別な・・・
ぐ、と胸が苦しくなる。
ピタリと止まった手を、ぐいと動かして、また文字に添わせていく。
でも、今私がすべき事は実績を作ること。会いたくないという気持ちだけで、絶対に断れないし、断りたくない。
千歳は、麗斗が声をかけるまで、
食事を取ることも忘れて机へ向かった。
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