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パーティ当日、開始の1時間前、
千歳は麗斗に付き添われ、今回のお客様への挨拶をしていた。
そのイギリス人は優しそうな老夫婦で、事前の打ち合わせでの千歳の真剣さに、もっと気楽でいいよ、と肩の力を抜かせてくれた。
穏やかな夫婦の笑顔の言葉のおかげで、少しだけ気持ちが軽くなった。
だが、
会場入りの瞬間、千歳は再び、ガチガチに緊張していた。
隣に立つ麗斗が心配そうにこちらを見ているのが分かる。
何か、飲み物でも持ってくるか?と聞く麗斗に、千歳は情けない表情で首を横に振った。
パーティが始まった。
夫婦を紹介するため、輪に積極的に入り、お互いを紹介し、話を盛り上げる。
通訳が日本人女性という事に見るからに嫌な顔をする年配の男性客には、麗斗がスッと横に立ち、千歳のフォローをしてくれている。
麗斗・・・!ありがとう・・・!
感謝を伝えたいが、もはやそんな暇は無い。
実際に自分が英語で話すのと、通訳するのはレベルが違うことだと、千歳は思い知っていた。
頭を休める暇がない!
そして、誤ったニュアンスで伝わることだけは避けたい。
外から見えない服の下で、千歳はだらだらと汗をかいていた。
突然会場が大きく湧き、ハッと時計を見る。
まだ、たったの1時間・・・!
時間が進むのが余りに遅く感じる。
目眩がしそうだ。
一瞬頭がフリーズしそうになる。
その時、婦人が「Oh!Dear!」と感嘆の声をあげた。
千歳も盛り上がりの中心に目を向け、
そして、
必死さも何もかも、全て忘れたかのように、
遠い、その場所にいる人物を見つめた。
そこには、美しい青年と、人形のように可愛らしい淑女の姿があった。
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