12.見えない心

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さっさと帰りたい。 会場に到着して早々、志恩は表情に微塵も出さずに、そう思っていた。 案の定、華の友人という者たちが押しかけ、 どうして一緒にいらっしゃるの、まさか!と、きゃぁきゃぁと煩い事この上ない。 身だしなみはこの国最上位の女達に囲まれても、 もう、志恩の目には、誰も一緒に見える。 当たり障りの無い受け答えをしながら、目線を輪の外にやった志恩の顔から、 一瞬で笑顔が消えた。 見間違える訳ない。今のは・・・! 「少し失礼しても宜しいでしょうか、お嬢様方」 そう言って輪を出る志恩の腕を、華が引っ張る。 「どちらに行かれるの、あまり離れないようにと父様も仰っていたわ。」 甘えた上目遣いに、舌打ちが出そうだ。 「そのお父様の商売相手がいらっしゃっているのです。華様、少しご友人との時間を楽しまれては。」 そう言って、反論する隙を与えず、腕を降ろさせ、振り切るように人の間を抜けていく。 「・・・千歳!!」 こちらから去ろうとするその背中に、志恩は我慢出来ず声をあげた。
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