473人が本棚に入れています
本棚に追加
・・・おい!
「おい!」
肩を捕まれ、ハッと顔を上げる。
ふらふらと導かれるように、またあの川沿いに来てしまっていた。
「麗斗・・・」
私の顔を見て、麗斗が顔を歪める。ひどい顔をしているのだろう。
「お前・・・大丈夫なのか。聞いたぞ、お前の親父が警察に・・・」
「お別れを言いに来たの」
麗斗の顔が引きつる。
「別れって、なに・・・」
「私は売りに出されるわ。もう一生出てこれないかもしれないから、これまでありがとうって伝えたくて・・・」
麗斗が口を開く。
顔が歪む。
「勘弁してくれ・・・」
苦しい声が漏れた。
肩を掴んだまま、麗斗は離さない。
下を向き、こちらに聞こえそうな程、ギリ、と歯を噛み締めている。
そうだよね、どうしようもない。
ごめん、こんなこと、言いに来るべきじゃなかった。
もう帰るね、そう言って麗斗の手を降ろそうとした、
その手を、ガッと掴まれる。
「来い!!!」
「え?どこに・・」
「いいから来い!!!」
麗斗に乱暴に引っ張られる。
ギシギシと手が痛む。
引きずられるようにして千歳は、初めて久我家に足を踏み入れた。
最初のコメントを投稿しよう!