2.奪われた日常

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「麗斗様・・・!」 使用人たちが止めるのも聞かず、麗斗はどしどしと歩を進める。 洋館と和館からなる美しい久我邸。 その和館の一室で、麗斗の父親、久我晴成(こが はるなり)は、客をもてなしている真っ最中だった。 「麗斗・・・!」 いけない、そう思い腕を引っ張るがビクともしない。 麗斗は晴成と客のいる部屋に飛び込んだ。 「な・・・!麗斗、お前、何を・・・!」 「父さん・・・!」 麗斗は絞り出すような声を出す。 「頼む、こいつと結婚させてくれ・・・!」 悲痛にも聞こえる声が響く。 唖然としている客を、使用人が慌てて別室に連れていった。 「麗斗・・・お前は何をやっているんだ!!!」 ビリビリと響くような怒声。 ビクッと、麗斗と千歳の身体が固まる。 晴成の目が麗斗から千歳に移る。 その顔が嫌悪に染まっていくのを千歳は見た。 「また、その女か」 冷たい声が落とされる。
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