1.居心地の悪いパーティ

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呼んでいたのは園池家の家長、千歳の父親である園池具忠(そのいけ ともただ)だった。 そばには、どこかの富豪か、若い男性がいる。 「うーわ、あの遊び人に目ぇつけたの、お前の親父。  お疲れ、せいぜい頑張って。」 そう言う麗斗を睨みつけ、具忠のもとへ向かった。 「やぁやぁ、こちらが娘の千歳でね、  おい、さっさとこっちにこないか!」 「千歳と申します」 しおらしく身体を曲げる。 嬉しそうに話す父親と、明らかに下衆な目でこちらを見る男。 本当に嫌気が差す。 そう思いながら、千歳は無理矢理微笑んだ。 共学の学校に通っていた、その事実に男の顔が引きつったあたりで、 部屋の奥から黄色い声が上がる。 何だ、とそちらを向くと、その輪の中心にいる人物だけ光が当たったように輝いている。 八神志恩(やがみ しおん) 昔ながらの家柄は無い、貿易で財をなした人物だ。 色素の薄い髪と目。誰か血縁に外国の人でもいるのだろうか。 スラリと高い身長と柔らかい笑顔。 たとえ家柄は無くとも、若い女性が心惹かれるのも無理はない。 「チッ、あの成金が。」 そう言って醜い顔をする父親を冷ややかな気持ちで見つめる。 今や、その成金にだって頭を下げて救ってもらわないといけない状況を、この人は分かっているんだろうか。 残念ながら父の意図に反して、今夜も有力な娘の嫁ぎ先は見つからなさそうだった。 人の口に戸は立てられない。 園池家が株に手を出し、結果、暴落した末の借金を背負っているのは周知の事実。 結婚適齢期の娘は、この時代に共学に通っていた変わり者。 たとえ美しいと称される見た目でも、 華族も成金も、求めているのは家柄と資産。 父はいつになったら気付いてくれるのだろう。 そう考え、またため息をついた。
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