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今日も朝から芝居見物の予定で、さすがに和恵一人を連れ歩くのは世間体が悪いと気が付いた金兵衛は、このところ子ども達をも伴うようになっていたのだが、この朝初太郎は、お腹が痛いと言い出した。
幼子の腹痛は、時に命にも関わる大事になることもあり、決して油断は出来ないものだ。
貧乏旗本の娘であった和恵は、これまで芝居になど縁は無く、初めて見た時こそ、その熱気と華やかさに驚いたものだが、役者にも芝居の内容にも一向心は動かず、様々なしきたりを覚え、周囲の話について行くだけで精一杯。気疲れする一方であったから、生さぬ仲とは言え母である自分が残って側に付いていてもと思ったが、和恵を連れ歩くのが第一の目的の金兵衛は、乳母に任せておけば間違いは無いと外出を取りやめるつもりは無く、乳母にも、
「ご心配なさらず行ってらっしゃいまし」
と、言われれば、和恵はいつも通りの微笑みを浮かべて頷くのみだ。
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