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     *     *     *  捨てなければと、幾度も幾度も思いながら……  いいえ、決して捨てることなど出来なかった。  捨てるつもりなど、本当は微塵も無かった。  だって、これだけが私の――!  失いたくない。  長い間灰に埋もれていた埋み火が熱を帯び、燃え上がった瞬間だった。  失うくらいならば、いっそ共に……  心を捨てることなど、出来はしなかった。  炎の中で和恵は、たった一度きりの、淡く儚い思い出を胸に抱きながら、この家に来てはじめて声を上げて泣き、そして笑った。  和恵はこの日、心を取り戻し、そして、命を捨てたのである。
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