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蔵前の札差、板倉屋金兵衛は、新しく迎えた二十も年下の若女房をひけらかすかのように、不相応なほどに着飾らせた和恵を連れて、今日は芝居見物、今日は寺参りと、毎日のようにそこここへと連れ歩く。
貧乏暮らしで化粧気も無く面やつれしていた頃とは異なり、既に年増と言われる二十三とはとても思えぬ美しさ、初々しさであるとは言え、小娘でもあるまいに日々取っ替え引っ替え艶やかな着物を着せて連れ回すなどはやはり常軌を逸しており、たちまち町中の評判となった。
好奇の視線にさらされて、普通ならば恥ずかしくて顔も上げられぬという所だろうに、和恵は目の下に仄かな笑みを漂わせ、楚々として金兵衛に付き従う。
その微笑みは、ひたすら貞淑で従順な妻の面であり、そこに心は無かった。
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