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 それでも。  果たして他に手立てがあっただろうか?  結局――  誰に強要されたわけでも無い。和恵は、自分自身で自分を売ったのだ。  弟は、姉を人身御供に差し出すようなこの婚儀を嫌い、そんな金受け取れるかと叩き返しかねない勢いで、和恵のことさえ白眼視して随分荒れたが、和恵がいなくなれば、否が応でも金の有り難みを知ることになるだろう。  武士とて、金が無ければ暮らしていけぬ今の世の中なのである。  上手いことやったものだ。  苦界に身を沈めるより、よほどましだ。  妾では無いだけでも御の字だ。  そんな声さえ聞こえてくる。
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