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ベッドの枕元で、スマホが鳴る。 眠てぇ。何時だ? 今... 朝 9時24分。着信の表示は ボティスだ。 「うい... 」 『言え』 「“ライラック”」 『フランス語』と、聞かれると オレの腕には、白い焔の模様が浮かぶ。 今ここに 鏡がないから確認は出来ないが たぶん、右眼の周りにも。 「“リラ”」 『良し。後で教会だ』 これで通話は終わって、スマホ持ったまま あくびする。もう起きるか... 電話の短い この確認の会話は、毎朝の日課だ。 リラ。預言者の名前。 ルカと恋した。 預言者は、預言を遺して灰になる。 自殺を選んだ人が “天に昇らせてやる” と 天のヤツに使われている。 そうして、預言者の記憶は オレらから削除される。預言の言葉すらも。 これは、表層の記憶から 消えるということだ。 深層... 意識しないような深いところには残る。 だから以前、ボティスがまだ悪魔で 思考や三世が視れた時は オレら自身が忘れてしまっていたことでも 過去の記憶として視えた。
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