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 誤解のないようはじめに申し上げておきますと、私は決して、義母を疎んでいたわけではないのです。  短い間でしたが、お義母さんには本当によくしていただきました。  それでも私は、薄情にもあの人を置いていってしまったのです。  夫は私より八つ年上で、夫は四人兄弟の末っ子でしたから、私が嫁いだときには、義母はそれなりに高齢だったのです。義父は既に鬼籍でした。  義兄義姉たちはそれぞれ県外に家庭を持ち、近くに住んでいるのは夫だけでした。  だから、義母が倒れ、介護が必要になったとき、真っ先に白羽の矢が立ったのは夫だったのです。  正確にいいますと、私に、ですが。  夫は終ぞ義母の世話などしなかったのですから。  けれども私は別に構わなかったのです。義母には良くしていただきましたから、少しでも役に立てるならと。  そうして義母との同居が始まりました。  介護といっても、はじめはさほど手を貸す必要もなかったのです。  義母は元々行動的で気丈な人でしたから、周りの手を借りたがりませんでした。  しかし、同居を始めて一年経った頃、散歩に行こうとした義母が玄関先で転び、左足を骨折してしまいました。  そこから彼女は一気に脆くなってしまったようでした。
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