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義母の状態が悪くなりだしてから、夫は仕事が忙しいといって、遅くまで帰らないことが多くなりました。休日も、なんやかやと一日中出かけていました。
家にいる間は、私の顔を見て深々とため息を吐いたり、晩酌をしながらまるで悲劇の主人公のように義母のことを嘆いていたり、そんなことばかりしていました。
けれども義母のことを嘆くわりに、夫は義母の部屋にはまったく近づこうとはしなかったのです。
義母の介護と日々の暮らしのことで精一杯で、私は夫が外で女と会っていることに、長いこと気づきませんでした。
――そうですね。あなたの言う通り、よくある話なのかもしれません。
けれど、そんな陳腐な話でも、あの頃の私の心を砕くには充分でした。
だんだんと私だけでは義母の世話に手が回りきらなくなり始めていて、私は何度も夫に相談しようとしたのです。
夫は話を聞こうともしなかった。
それどころか、ずっと私を裏切っていた。
途端に、私は何もかもバカらしくなりました。知らぬが仏とはよくいったものです。
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