【地球儀上の0座標】

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【地球儀上の0座標】

大きな大きな、地球儀の上。 気の向くままに、あちらへ、こちらへ。 そして、私は、たずねてみる。 「ママ、ここは、どんなところ? 」 ママからの答えは、いつでも、すぐに返ってくる。 「文明が生まれて、もう、五千年にもなる、古くからある国よ」 「一年中、もやもやと、蒸し暑いようなお天気が続くの。数え切れないほどの、たくさんの神様が居て、住民たちは、それぞれに、好きな神様を信じているの」 と、そんなふうに。 私は、今度は、こちらへと。 そして、また、たずねてみる。 「その辺りはね、二千年ほど前から、争いの絶えなかった土地」 「自分たちの神様だけが、唯一の神様、そう信じる種族同士が、今もなお、争いを続けているの。詰まらないわよね? 」 と、すらすらと、ママは答えてくれる。 そう、ママは、なんでも知っている。 石積みの神殿の居並ぶ、温暖な海沿いの土地のことも。 永久に溶けない氷の壁に閉ざされた、北と南の極地のことも。 極彩色の花々の咲き乱れる、赤道付近の灼熱の島々のことも。 そして、奇妙な形の幾つもの塔が、ひしめくように居並び、その隙間を、奇妙な機械の走り回る、『都市』と呼ばれる、神を忘れた土地のことをも。 私は、ふと、思い付いて。 「ママ、それなら、私たちは、どこに居るの?」 しばらく、考えてのち、ママは。 「そうね、私たちは、この地球の上に、いつであれ、どこであれ、居なかったことは無いのよ」 と? 私は、また、思い付いて。 「それなら、私たちは、これから、どこへ行くの? 」 ママは、ちょっぴり、おかしそうに。 「そうね、これまでと同じように、これからも、ずっと、どこにでも居るし、いつまでも居続けるのでしょうね」 と。 「神様のように? 」 と、私。 「ええ、そう、神様のようにね」 と、ママは。 一個の細胞だけで出来た身体を、ゆらり、ゆらりと、揺らしながら。
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