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午後から降り始めた雨は次第に激しさを増していて、アスファルトを黒く染めあげている。塔山は手にしていた傘を強く握り締めて、もう一度住所を確かめてから一歩を踏み出した。
数センチの隙間を残して開いている門扉を軽く押す。腰をかがめて上半身だけ乗り出すと、郵便受けの脇にプレートが貼ってあるのが見えた。
あたりは薄暗くなっていたし、インクで書かれた文字は消えかかっていたが、『榊』と『クリニック』の文字がかろうじて読み取れる。
「ごめんください」
声を出して敷地に足を踏み入れた。
屋根つきガレージの中の車はよく磨かれているが、庭はあまり手入れがされていないようで雑草が勢いよくはびこっている。狭い庭を横切って低い階段を二つ上がったところに玄関ドアがあった。
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