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karte3. 目黒航介の過去
待合室に掛けてある壁時計から聞き慣れたメロディが聞こえてくる。
日誌を書き終えた目黒航介は、椅子から立ち上がると大きく伸びをした。
日中は汗ばむ陽気でも、日が落ちるとかなり冷えこんでいる。最後の診察が終わってから十分が過ぎていた。
新しい患者は来ない。窓のブラインドを下ろして、受付のゴミを集めているところへ、白衣姿の榊が顔を覗かせた。
「今日はもう予約は入っていませんね。玄関を施錠してから、診察室へいらっしゃい」
「はいっ」
診察室と聞いて、弾んだ声が出ているのが自分でもわかった。平常心を装いながら、机の上に散らばったカルテを片付けて照明を落とし、隣のドアをノックした。
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