karte5. 神山大悟の襲来

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karte5. 神山大悟の襲来

『榊メンズクリニック』のインターフォンが鳴り響いた。  最初に二回、応答がない様子を見てさらに二回。 「あ、蓬莱(ほうらい)さんは出かけていたんだ。少し、お待ちください」  部屋で論文を読んでいた榊は階段を降りて玄関に向かう。  日曜日の昼下がり、休診日であっても呼び出しがあればクリニックを開けることにしている。 「すみません。お待たせしました」  急いでドアを開くと、全身黒ずくめの長身の男が入り口を塞いでいた。  陽光を背にした男からは、匂いの強い煙草と整髪料の人工的な匂いが漂ってくる。やや長めの髪をバックにして固め、一目見てわかるほど仕立てのいい光沢のあるスーツに身を包んでいる。切れ長の瞳が放つ眼光は鋭く、目尻や口もとには深い皺が刻まれている。 「邪魔するぞ、時雨(しぐれ)」  押し入るように中へ入ってきた男を見上げて、榊は思わず息を飲んだ。
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