(一話完結)

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(一話完結)

どうやら、(おとり)にされたらしい。 目が覚めると、俺は古びたアメ車の運転席にひとり座っていた。 車の前には、少し離れて、〝その筋の〟大きな組織のトップーー会長とか*長とかーーという風情の男がキャンピングチェアに座っていた。髪はきわめて短く、サイドには剃り込みが入っており、和服を着て、堂々としている。脇を二人の側近が固めている。向かって左は肉体派で、右は頭脳派らしい。 和服の男はにやけながらリボルバーをもてあそんでいる。俺の方を見て、にやりとする。そして銃口を俺に向け、すぐに逸らす。俺は、ドキッとして、ホッとする。男は中の弾を確認するように回転式弾倉を銃身から外し、クルクルっと回転させた。一瞬、弾倉の穴の一つから向こうの空が見えた。たぶん、一発分だけ空なのだ。男が何か言っているが、まったく聞こえない。「覚悟はできたか」とか「貧乏くじを引いたな」とか言っているように思えたが、憶測に過ぎない。 頭がまだ少し痺れている。 隣には刑事がいたはずなのだが、いなくなっていた。 俺は奴にこの車を運転させられ、此処(ここ)に来た。ちょっとした弱みを握られ、金にも困っていたのだ。     
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