(一話完結)

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確かなことはわからないが、どうもこの車は警察に押収されていたものらしい。なぜ押収されたのかまでは俺は知らない。そして此処に到着して、まだ少し時間があるからと、奴に渡されたボトルタイプの缶コーヒーを飲んだ。 そして気づいたら、こんなことになっていた。 拳銃を向けられるなんて初めての経験だし、正直、実感はわかなかった。銃よりもむしろ男の雰囲気に恐怖を感じた。男はたぶん俺が誰だか知らないのだろうが、虫けら同様の取るに足らない存在であることは、ひとめ見ればわかるのだろう。 男はさっきよりも一層皮肉な表情で笑うと、銃口をぴたりと俺の顔に向けた。頭を撃ち抜くつもりなのだ。銃弾が頭を貫通するのはどういう感覚なのだろうと思った。そして死ぬということは。この世に未練がないと言えば、嘘になる。まだ死にたくなかった。 だが、不思議と俺は慌てふためかなかった。心臓は飛び跳ねたが、俺は冷静に男を見つめていた。もちろん睨みつけることなんかできない。ただ見るだけだ。     
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