8話 名前

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最近調子が狂う。 少年が来てからというもの、院内の雰囲気というか 空気が変わった気がする。 看護師たちも少年に振り回されるのを楽しんでいるように感じる。 その場にいるだけで空気を変えてしまう存在。 例えば、冬に向かう今の季節の寒い空気を 一変して暖かい春の空気に変えてしまうような 理解できない空気感を持っている、というのが一番近い表現かもしれない。 育ってきた酷い環境が自己防衛として身につけさせたのか それとも持って生まれたものなのか。 どちらかは知らないが、私には持ち合わせていない空気だなと思ったとき 以前岩見が私に似たようなことを思い出した。 勿論、少年が齎す空気とは真逆の意味でだが。 ーーーーお前がいると、空気が凍るよな。     理論として正しいことがいつも正しいとは限らないんだぜ 学生時代から感情論ではなく、理屈として正しいことしか認められなかった私に 岩見は度々呆れたように言った。 思い出したついでにその言葉の意味を改めて考えてみたが 学生時代と同じく、結局その言葉の意味はわからなかった。
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