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異様だとしか思えないその光景に
事故かもしれないと急いで駆け寄ると
少年が植え込みの隙間に挟まるようにして横向きに倒れていた。
「おい」
声を掛けてみるが返事はない。
薄暗く、表情までははっきりとは見えないが
青白く生気のない肌の色に一瞬最悪な状態を想像して
少々躊躇いつつも手を伸ばし、植え込みの中に見える
白い首筋に手を当ててみる。
脈はある。
しかしかなり微弱だ。
触れた皮膚もかなり冷たい。
どういった状況でこの10月初旬とはいえ、夜は冷える気候の中
長めの半袖Tシャツ姿でこんな場所で倒れているのか、到底見当などつかなかったが
この人物が酷く衰弱しているということだけは容易にわかる。
関われば面倒なことになる。
直感的にそう思ったがこのままここに放置しておくわけにはいかない。
植え込みの間に手を伸ばし、身体を引き寄せ抱き起こすと
腕の中の少年の目は閉じたままだが、僅かに眉根が動いた。
とりあえず自分のジャケットを脱ぎ、少年の細い身体に巻きつけ抱き上げて
既に閉めてあるクリニックのエントランスに駆け寄りインターホンを押した。
当直の看護師の返事の後、すぐに扉を開けさせ
少年を中へと運び込んだ。
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