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3話 違和感
翌日。
完全に寝不足だったが、長年医師という仕事をしていれば
寝不足の方が当たり前になっていて
さほど疲労感を感じないままに午前の外来診察を終えた。
今日も外来はとても混んでおり、時計を見ると13時半を過ぎていたが
昼食を摂る前に2階にある病棟に向かった。
エレベーターを降り、廊下に出るとすぐ
子供の派手な泣き声が耳に飛び込んできた。
あの子供か。
だから子供は嫌なんだ。
普段聞きなれない異音とも言える声にうんざりする間もなく、エレベーター前のナースステーションから走り寄ってきた看護師に
「ついさっき目を覚まして、いきなり泣き始めたんです」と報告された。
「痛みを訴えているのか」
「いえ、1時間前一度目を覚まして痛みを訴えたの
で座薬で対応して痛みは治まったようなのですが」
「愚図っているだけか。いや、そんな歳じゃないか」
体格はかなり細身だが小学校高学年か、もしくは中学生くらいには見えたことを考えて
いくら子供だとはいえ、その位の年齢の少年が愚図ってあんな泣き方はしないだろうと
すぐに自分の言葉を否定する。
「いえ、それが。ちょっと様子が……なんて言えばいいか、その」
看護師の、はっきりしない返答と子供の異常な泣き声に違和感を覚えつつ
仕方なく病室へと向かった。
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