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鍵を回すと、何の抵抗も無くそれは回った。暫しの思考に普段の人間の脳の怠け具合を感じる。一気に押し寄せた様々な考えで火照った様になった身体を、深呼吸して抑える。少しの躊躇いの後、玄関のドアを開いた。 言葉がいらない何て嘘だ、と誰かが言っていた事があったのを思い出す。確かに「要らない」は嘘かもしれない。しかし「入らない」事は本当だ。首に回された腕の重みを感じながら思った。自分の両腕を回し、その存在を確認する。たとえ今が夢だとしても、この存在は本当だ。歓喜は一種の狂気だ。今ならば、メフィストフェレスに魂を渡すあの一言を言っても構わないかもしれない。柱時計がゴォン、と何度か鳴った。
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