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な、なに?改まって。 静かな指示に少し緊張しながら、大人しく従った。 「仮にまゆちゃんが体の不自由な子なのだとしたら、自分たちだけで抱え込まないようにしないとなって思った」 「え?」 「頼れるものにはどんどん頼って、僕たちが引きこもらないようにしないとなって」 「それって、私が支援センターに行けないことを責めてるじゃない」 「そうじゃない。無理はしなくていい、というか、無理はしちゃだめ」 私をまっすぐ見つめる。 「うん……」 「まゆちゃんは、僕たちのかわいい娘。それだけだよ」 「うん……」 頷くしか、できなかった。 まさか。 まさか、こんなにも考えてくれていたなんて。 こんなにも愛されていたなんて。 張りつめていたものが一気に緩み、目頭が熱くなる。 ああ。 私、この人と結婚して、本当によかった。 そのとおりだ。 本当に、そのとおり。 視野が狭くなってた。 小さなことで悩んでた。 一番大切なことを忘れそうになってた。 夫の方がずっと、ちゃんと考えてた。 わかっていないのは、私の方だった。 この日以来、私はつまらない秤を捨てた。
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