熱砂の記憶

2/8
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
目を開けると、そこには……。 見渡す限りの砂漠。 広大な、灰色の空。 どうやら、しばらくの間、意識を失っていたらしい。 オレは砂の上から、ゆっくりと立ち上がった。 こんな乾いた光景は、特別でも何でもない。 この時代には、ごくありふれた風景だ。 それが、加速しすぎた文明の代償なんだろう。 立て続く異常気象と、世界地図を塗り替える戦争。 それらは、自然環境を壊し、人口を激減させた。 それでもなお回り続ける文明の歯車。 止まらない車輪は、人々の欲望を掻き立て、また、それが車輪の動力となる。 踏み出した足の下で、砂礫が乾いた音を立てた。 高度な科学とは不釣り合いな、乾ききった砂のうねりをオレは一人踏みだす。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!