熱砂の記憶

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高温や砂風から身を守るため、肩から足首まであるマントを纏っている。 元は白地のマントが、砂埃に煽られて、煤けていた。 「助けてくれ!何も思い出せないんだ!」 不意に、悲しげな絶叫が響き渡る。 足を止めて振り返ると、白服を纏った金髪の男が、こちらに向かって駆け寄ってきた。 そして、オレの元にたどり着くと、男はよろめいて、砂礫に両膝をつく。 砂飛沫が、熱風に散った。 オレは、足元にひざまずく金髪の男を見下ろしながら、腰の太刀に、そっと手をかける。 すると、男は血を吐くように叫んだ。 「記憶がないんだ……!自分が誰なのかも……何も思い出せない!」 そして、砂に膝をついたまま、オレを仰ぐ。
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