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原子番号87:フランシウム
私、野々垣紗弥は、水無川大学薬学部の研究室で、せっせと書類やら提出書の整理をしていた。……本当は私のすべき仕事ではないというのに。
しかもこの研究室は蛍光灯の明かりでも十分に光は行き届くはずなのに、どこか陰がある。いくら慣れたとはいえ、長時間ここで書類整理ともなればさすがに気が滅入ってしまう。
確かに、私は助手をしているので教授の補佐や多少の事務仕事をすることはある。あくまで多少の事務仕事は、だ。
いつものように不平不満を心中のみに留めながら、教授が溜めに溜めていった書類を整理していると、書類と書類の間に挟まった手紙を発見した。けれどこの書類の量。発掘した、と言っても差し障りがないかもしれない。……よく発掘した、自分。
一体いつのだ、と消印を見ると十日ほど前。意外と最近のものだ。
「市川教授、教授宛てに手紙が来てますよ、珍しく」
声をかけると、ひたすらに何かの資料らしき本を読んでいた、市川と呼ばれた男が、その本にしおりのように指を挟んだままこちらに歩いてきた。
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