第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く。

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第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く。

       3 12月28日、朝の9時過ぎ。 捜査会議は無く、本部となる会議室には刑事達が集まっている。 昨日、夫の金橋被疑者の捜索に加わっていた所轄の捜査員は、金橋被疑者への事情聴取とその事実確認を任されて飯田刑事から話を聴く。 一方、薬物取締課の刑事が、木葉刑事の周りにいて。 久坂刑事が、またバナナを食べた後で。 「木葉、お前の眼力は怖いな」 ボンヤリする木葉刑事は、お好み焼き弁当にチューブのマヨネーズを掛けながら。 「朝からなんスか」 「片岡さんからお前の見付けた麻薬の在処を聞いたが、俺でもあれだけは見付けられん。 どうだ、ウチの課に来ないか?」 「メンド~」 「刑事なんて、何処でもメンド~だろうが」 「久坂さん、そっちの捜査は?」 「ん。 昨日で、薬物中毒者、売人合わせて8名は確保した」 「早いッスね」 「お前や織田刑事が捜した情報が大助かりだ」 「今度、なんか奢りで」 「フン、合コンでも良いぞ」 久坂刑事の仲間は笑って返した。 だが、木葉刑事より。 「それから、追加で」 「ん?」 「周辺の住民を含め、自殺した者や病死の事も調べた方がイイんでは?」 この話に、久坂刑事達が捜査員の顔に変わる。 「木葉、それはマジ情報か?」 弁当に鰹節と青海苔を掛けた木葉刑事だが。 「昨日に事情聴取した、夫を装った金橋曰く。 少女にウリ(売春)をさせる為に、薬物を強要したことも仄めかしました。 脅された若者や家庭の在る人間は、苦しみを外に出せず自殺したりしますし。 薬物中毒に陥れば、不自然な死に方も在ります。 現場周辺でも関係者が出たならば、病院に聴き込む必要も有るかも…」 すると、拳を握る久坂刑事。 「クソ野郎だな。 俺が取り調べしたら、机を殴りそうだ」 「金橋の取り調べや裏取り(事実確認)は、向こうの刑事さん等が遣るみたいなんで。 美田園管理官に、麻薬絡みの情報は逐一挙げる様に言ってみれば宜しいかと」 「おう、それは無論だ」 「こっちは、あの麻薬御殿の風俗関連お客様に当たります。 薬物に関わりそうな人物は、事情聴取の次第ではそっちに回します」 久坂刑事の前に座る色眼鏡のインテリ風刑事より。 「早く天国の幹部を捕まえて実態の解明をしたいです。 今回は、斬り込めるチャンスですよ」 頷く久坂刑事で。 「情報は、木葉や捜査本部に任せりゃイイさ。 よし、昨日の続きに行くか」 と、席を立つ。 久坂刑事と薬対課の刑事が捜査に出る
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