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会場には赤いカーペットが敷かれ、壇上正面には受賞者関係者席、左側には招待客席、右側には受賞者席が設置されている。晴人の座る受賞者関係者席の後ろには数社の新聞社と、地方紙記者。それに2社程度だが局のカメラもある。その中に見知った顔がいないことを祈りながら、そちらを見ることもできない自分に少し辟易する。
壇上では仰々しい燕尾服の大臣による挨拶が始まった。潔癖過ぎるほどに潔白であることが欠点などと揶揄されている大臣だ。公費の私的な流用と、老舗料亭との癒着を一史が疑い、張り付いていたのを思い出したが、今の自分はそれを見る立場ではないことを言い聞かせて目をそらした。
今の自分の立場といえば。
壇上の脇に設置された受賞者席で小さく肩をすぼめて俯く少女に目を移す。教育関連機関のトップとも言える大臣からの賞を受賞して尚、14歳の少女は自分のおかれた状況に違和感と疑いしか持っていないようだった。
なぜ私が。
なぜこんな大それた賞を。
足元の白いスニーカを撫でる目線がそう語っている。爪先は内側に向き、掌はきゅっと固く握りしめられていた。
大臣の要領を得るような、得ないような話が終わった後で、壇上傍らに立つ女性が受賞に移る旨を宣言する。少女の肩が大袈裟に跳ねて、大きな目がいっそう大きく見開かれた。それは稀有な賞を得た自信や誇らしさではない。恐怖と、不安に満ちていた。
申し訳ないことをした感が、晴人の中に燻る。
じわじわと、少女の目に薄い膜が張っていくのが、見えた気がした。
名前を呼ばれた少女は操り人形のようにぎこちない動きで登壇し、大臣から大きな盾と自分の顔の倍以上もある、賞状を受け取った。
大臣に促されて、振り返る。晴人の背後からフラッシュが焚かれる。そのカメラに向かって大臣と握手をしながら、笑みを張り付けた顔は強張っている。
少女は壇上から晴人を見つけると、今度こそ泣いてしまいそうな顔で、助けを求めるようにじっと、晴人を注視した。
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