遊べばいいんじゃない?

1/4
前へ
/14ページ
次へ

遊べばいいんじゃない?

奈緒「先生ぇー……」  間延びしたやる気の入らない声。  外からは蝉一匹の鳴き声もしないのに、教室の中は視界が歪むような湿度と熱気で覆われていた。 颯翔先生「……なんだ」  大きめの棒アイスをちまちまと舐めながら、似たり寄ったりの腑抜(ふぬ)けた声で応える。  こうなるのも教室の前の温度計が示すのは30℃。夏冬兼用の制服では地獄に近い気温だった。  完璧主義の校長先生(カミサマ)は、再現する場所を間違えている気がする。  だったらせめてエアコンをつけてほしい、なんて言ってしまった時には、景色はすぐに吹雪に変わるのだろう。 奈緒「暑いので文弥くんの席替えを要求しまーす……」  一方後ろの温度計が示すのは26℃。一角の生徒だけは明らかに、他と違った涼しい顔をしている。  いや、涼しさを求めて集まっているから、若干窮屈そうではあるが。 颯翔先生「そうだな……、文弥、先生の前に来ないか?」  欲望丸出しの誘いには返事がない。 美琴「先生ぇ~、ふみくんは夢の世界へ旅にでちゃってまーす」  暑さでダウンしていない美琴は、いつもの調子で言う。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加