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どこ…
ここ……
ここは……いったい、どこ?
まるで大切な物のように丁寧に降ろされた七海は、ふくらはぎに鮮やかなリボンのような草が触れ、足裏にはふわふわと柔らかい土を踏んでいるのを感じて視線を降ろした。
まるで雲みたい……
ふわん。
ふわん。
ふわん。
ひと足ごとに地面を踏んでも、足の裏は汚れないし、マシュマロのようにふにっという感触だけが返ってくる。
「なぁんか雲の上みたいだなぁ」
いつの間にか靴を脱いで同じように素足で土を踏む翼が、七海と同じように不思議そうな顔で視線を落とす。
今日はあの妖精王様だけでなく、ひかるおねえさんもいない。
本当にふたりっきり、だ。
なんだか……恥ずかしい…………
さっきまではまったく感じていなかったはずの緊張感がいきなり七海を襲い、ブワッと顔が熱くなる。
いったいどうしたのかと慌てだしたが、翼は気にもしないふうに今度はキョロキョロと当たりを見回した。
「ここの景色っていいなぁ。ちょっと散歩でもしねぇ?」
「さんぽ?」
「そ、散歩」
そう言われて七海は伸ばされた手を掴む。
──こうやって、年上の人と一緒に歩くのは、いつ振りぐらいだろうか。
今よりずっと小さい頃、たぶん母ではない『あの人』と繋いだ気がするが、力強く指を握られたり、急に引っ張られたり、振り回されたり──と、『楽しい』というよりも『怖い』の方が勝っていた記憶がある。
ついには手を振り払われて──
『ちゃんと歩けないんだもん!アタシは悪くない!七海がズルイの!ちっちゃいからって、ちゃんと歩かないんだもん!』
ちゃんと歩かないから、ななみがズルクテ、ワルイ。
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