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靴をきちんと履いたのかの記憶はなかった。
保健室から一番近いトイレに駆け込んで、個室のドアを開けてうずくまる。
胃がせり上がってきて、腹の中身を吐き出す。
昼食がまだだったので、出てきたものは胃液で、酸っぱいというよりはもはや苦いそれが便器にどぼどぼと吐き出されるのをただ無感情に見つめる。
吐くのは日常だった。
だから、このすえたみたいな匂いにも、黄土色をした液体にもなれていた。
不健康なのは理解しているが、いつものことの上、原因をどうすることもできないので諦めている。
洋式の便器を抱え込むみたいにうなだれていると、背中に何かが触れた。
黒い影がついに触れるようになったんじゃないかと不安で、直ぐに振り向くと、それは彼で、そっと背中をさすってくれた。
「あの、ここ汚いし……。」
彼の手を煩わせることが申し訳なかった。
どうせ胃の中の胃液が全部出てしまえばそれ以上は出ないのだ。
戻るようにという気持ちで伝えると、彼の手は離れる。
まあ、そうだろう。
多分かれも突然の体調不良の原因は分かっているに違いない。
そんなもの気にするなと口癖の様に言われてきているのだ。呆れられて当然だと思う。
それなのにも関わらず、彼の手は俺の頭を乱暴に撫でた。
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