24人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
嫌なにおいがしている筈なのに、そんなこと全く顔には出さず頭をなでられる。
吐き気はいつの間にか納まっていて、「あの」と声をかけると手を離される。
水を流して吐瀉物を片付ける。
差し出されたハンカチは多分口を拭えということだろうけど、汚すわけにはいかずためらっていると
「何も考えなくていいから。」
と言われ、ハンカチを受け取ってしまった。
仕方がなく口元を拭いて立ち上がると、眩暈に似た感覚で足元がふらつく。
体を支えられて何とか歩く。
「ちょっとやせずぎじゃねーか?」
「そうかな……。」
自分でも貧相だという自覚はあるが、自ら貧相です、なんて言えるはずもなくはぐらかす。
「相変わらず青い顔だな。」
確認するように顔を見られ思わず視線を逸らした。
「なあ、今日俺の家来ないか。」
今日は丁度バイトもないし、少し俺の家で休んでいけばいい。
一人暮らしで誰もいないし、お前のそれがまた話だしそうなら俺が追い払ってやるから。
そう言われ、明らかに迷惑なのに思わず頷いてしまった。
了
最初のコメントを投稿しよう!