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講義は先ほど終わったのだが、どうしても立ち上がる事が出来ない。
立ち上がったところで何になるのであろうか。
どこへ行こうと、後ろからのしかかっている黒い影は付いてきてしまうのだ。
何気なく窓際を見ると、端正な顔立ちをした男が寝ていた。
恐らく一緒の講義を取っているのであろうが交流が無いので名前は分からない。
寝ている彼の後ろにも黒い影は居たが極力考えないようにする。
しばらくすると、目が覚めたのであろう。男はモゾモゾと動いた後起きた。
目を覚ました男の顔を見ると目付きがかなり鋭い。それが他のパーツの端正さと相まって近づき辛い雰囲気を出していた。
男は周りをグルリと見渡すとため息を一つついた。
恐らく寝入ってしまい講義が終わったことに気が付いていなかったのだろう。
すると影は流れるように彼の耳元に近づき、当然のようにあのセリフを囁こうとした。
だが、驚くべき事にそれはなされなかった。
男は面倒臭そうに頭を掻いた後、しっしと猫でも追い払うように手を振った。
まさか、彼にもあいつらが見えているのだろうか。
それよりも驚きなのは彼が手を振った瞬間黒い影がはじけ散り散りになったのだ。
それはすぐに元の人型に戻ったが、もう耳元には行かなかった。
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