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特にこれといって重大な理由もないのに「死にたい。」と考えてしまう事が誰しもあると思う。 いや違う。“思う”なんて不確定な話ではない。実際に“在る”のだ。 何故なら、俺には耳元で囁くもう一人の自分が見えるのだから。 ◆ 大抵の人間の後ろには黒い影のようなものが付き従っていたり、おぶさったりしている。 小さいころ、テレビの心霊特集を見てあれらは背後霊もしくは守護霊と呼ばれるもの何だと思っていた時期もあったが、それらと黒い影の性質は全く違う。 あいつらは囁くのだ。 直接脳に語りかける声のようなもので「死にたい。」と。 すると、少し逃げ出したいとか休みたいと思っていただけのはずが「死にたい。」に思考が置き換わってしまうのだ。 「死にたい。」と囁かれた瞬間、振り返るとそこには俺と同じ顔をした黒い影がいた。 そいつは、酷く面白そうに笑顔を浮かべながら「死にたい。」ともう一度呟いた。 中学生のころはこいつらが俺らの体を乗っ取るために耳元で死ねと言っている、そう解釈して怯えていた。 けれど、あの楽しそうな顔を見てしまってから考えが、変わった。 あいつらは俺らになり替わりたいだとかそんな切実な願いなど無いのだ。     
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