ダスト・ガール

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「それ、何捨ててんだ?」  それは、俺の気まぐれな問いかけから始まった。対して興味も無さげに問うと、視線の先の少女は色の無い大きな目をこちらに向ける。 「人の魂だよ」  至極当然だと言わんばかりに、彼女──三浦(みうら)(おとぎ)は答えた。彼女はその名の通り、御伽話にでも出てきそうな程の端整な顔立ちとミステリアスな性格の持ち主である。肩で切りそろえられた濡羽色の髪と規定より少し短いスカートを風に揺らしながら、彼女は不思議な光の塊を屋上の隅にある箱のようなものに投げ入れていた。 「は?意味わかんねーよ」 「絢斗(あやと)はアホだからしょうがないよねー」 「誰がアホだ!」  死んだ目のままニコニコと笑う伽に怒鳴る。俺のその様子が可笑しかったのか、彼女はケラケラと笑い転げている。  伽の言っている意味が、全く理解できなかった。確かに彼女が左手に持っているのは、漫画やアニメにでも出てきそうな人魂のようなモノだ。青白い光をぼんやりと放ちながら、茜色の風に揺られている。  しかし仮にそれが人の魂だとして、彼女は何故そんな紙屑でも投げ捨てるかのようにそれを扱うのだろう。伽からすれば、人の魂も紙屑も同等の価値ということなのだろうか。 「で、それが人の魂だとする。何でお前はそれを捨てるんだ?」 「いらないからに決まってるじゃない」 「仮にも人の魂だぞ?随分粗末だな」 「いいじゃない別に!」  乾いた笑顔を浮かべながら、伽が箱を軽く蹴った。ガラン、と音を立てて箱は呻く。屋上に放置されたままだというのに、その箱は新品のように綺麗だった。蓋のないゴミ箱のような形をしたそれの中には、伽が投げ捨てた人の魂が無数に入っているのであろうが、俺に覗く勇気はない。多少興味はあるが、ゴミ箱は常に伽が見張っているため変に手出しは出来ないのだ。
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