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「我が心霊研究会に新しい仲間が加わりました! その名も水桃織姫ちゃん! これで五人揃ったし、七月二十四日にある花火大会にも、ぜひみんなで行きたいね! いやあ、めでたい! みんな、はくしゅはくしゅー!」
――なんなのだ。
わたしは翌日、なぜなのか遙嫁ちゃんと一緒に心霊研究会なる部活動、その部室に来ていた。とは言っても空き教室を貸りただけの質素な部屋ではあるが。静かで適度に日射しも差し込む心地良い部屋なのは評価するが、わたしにはここに来る予定などなかったはずだ。遙嫁ちゃんが無理遣り連れて来たのだ。わたしは心の中で「どうしてそうなる」と何度繰り返したか知れない。
「水桃……織姫です。よろしく」
それでも、きちんと遙嫁ちゃんを含めた四人の部員に挨拶をしてしまうあたり、わたしも人並み程度にはお人好しなのかもしれない。別に友達がいないことを寂しく思ったわけではない。ただ、遙嫁ちゃんの熱心さに感心して、付いて来ただけだ。
「よっろしくー! あたしは鈔梅呂加! 幽霊部員第一号さッ!」
「いやそれまずいんじゃ……違った意味で」
わたしはどうしてか一人体操服を着ている呂加ちゃんに握手され、思わずツッコんだ。こんな部活だから、その自己紹介は異なる意味を有してくる。小説などであれば、文字通り幽霊がその部員というオチもあり得る。いや……そんなことは絶対にないが。
「ようやく五人目の部員が集まったというわけネん。織姫ちゃん、よろしくね。私は湊南恵美」
そう言うと恵美さんはわたしの頬に指を這わせ、あたかも口づけするような距離にまで迫ってきた。お姉さん的容姿と合わせて、その仕草は非常にエロティックである。
「や……やめやめやめ! なんですかいきなり!」
わたしは恵美さんの手を振り解き、怒り口調とともに彼女を睨んだ。
「あら恐いわん。可愛い娘には棘があるみたいネん」
その語尾が無性に艶めかしくもイラつくが、触れてはいけない部分なのだろう。今度は恵美さんと打って変わって小柄な女の子が自己紹介をしてくれた。薄い水色の髪でわずかに両目を隠したヘアスタイルで、双つの手にはなぜか一体の市松人形を持っている。いや……さすがに恐いんですがそれは……。
「よろしく」
そう言って少女はお人形さんをお辞儀させた。
「よ、よろしく……?」
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