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わたしは戸惑いながら返事をした。彼女自身にしたつもりだが、どうしても目が市松人形のほうへ行ってしまう。
「うぐいすちゃんは極度の人見知りなの。だから過分に怒らないであげてね」
「は、はあ……」
わたしは遙嫁ちゃんにそう言われたが、内心不安を募らせていた。聞くところ佑蒲鶯ちゃんというらしいが、このようなおかしな子と仲良くなれるとは思えない。先ほど紹介された二人にしてもそうだが、非常にわたしのこれからが心配だ。
「と、いうわけでこの四人が我が部活のメンバーだ!」
「遙嫁は自己紹介しなくて良いのか!?」
はきはきとした口調で呂加ちゃんにそう言われた遙嫁ちゃんは、再度わたしに向かって自己紹介をしてきた。
「そういえばそうだね! 私の名前は泉蒲遙嫁。この心霊会の部長です! ついでに言うとみんな同じ一年生だから、上下関係とかは気にしなくて良いよー」
呑気にそう言われたが、わたしはとてもじゃないがここにいる四人に馴染めそうになかった。一人は先ほど本人もそう言っていたように他の運動部と掛け持ちで幽霊部員として所属しているそうだし、一人は妙なスキンシップで近づいてくるし、一人は人形を持ち腹話術で話す女の子なのだ。
抵抗が無いと言えば嘘になる。いや、もはや拒絶反応すら催してしまう。わたしは以前人見知りだと言ったが、それは何も純粋な情動反応に限ったことではない。自らの意思で人を選んでいるのも事実なのだ。
わたしは満を持して問い掛けた。
「そもそもこの部はどんな活動をする部活なんです? 昨日は心霊写真と言われて三枚の写真を見せられましたけど、実際には何をして部として認められているのかわかりません。わたし、そうしたところがちゃんとしていないと無性に腹が立つんです。ただ部活という名目でわいわいがやがやと騒ぐだけの集まりなら、わたしは即刻勉学に時間を使うため、自室に帰らせていただきます」
遙嫁ちゃんが快活明朗な話し方をするなら、わたしは違った意味での正直者だった。わたしは無駄な時間を何よりも嫌う。青春を仲間や友達と謳歌するために「心霊研究」などという名目を立てているのなら、そんな部は今すぐにでも潰れればいい。生憎きゃっきゃうふふとした女子の戯れ事は、見ているだけで十分な性質なのだ。
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