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「織姫ちゃんはっきり言うねー。そう、この部活はただ女の子同士でわいわいがやがやするための部活ではない。怖いものを集めて、みんなで楽しもうという会なのだー!」
「帰ります」
わたしはその言葉を聞いて、一度受け取った入部届の用紙を木目柄の簡易テーブルの上に置いて、部屋の扉を内側から開いた。
「ちょっちょっちょっ、ちょっと待ってよ織姫ちゃん! 織姫ちゃんはまだこの部に来たばかりじゃないかー! もう少し居てくれない? ねっ、ねっ?」
「わたしを引き止めるには、交渉材料が足りないみたいだけど」
「と、言いますと?」
「この部活には、昨日のようなお茶菓子は出ないのかしら?」
「で、出ますともー! うぐいすちゃん、例の物を! 呂加ちゃんは織姫ちゃんの椅子を用意して! 恵美は……」
「私は織姫ちゃんの肩を揉んであげるわん」
三人は部長の指示で動いた。わたしはあれよあれよとされるがままで、気づけば心霊研究会の四人にもてなされていた。
「どうしてこうなるの?」
わたしはあっと言う間に王様……いや、名の通り姫のような扱いを受けていた。椅子に着席すると左手に呂加ちゃんの手もみマッサージ、右手に数種類のお菓子が入れられたバスケットを手にしたうぐいすちゃん、そして背後にはわたしの肩を揉む恵美さん。正直悪い気はしない。だが、初対面の相手にここまでしてもらうのも心が萎縮してしまうというもの。されどわたしは、続けて遙嫁ちゃんに言った。
「それで? 怖いものを眺めてわいわいがやがやと楽しむ部活でないのなら、ここはどんな部活動なのかしら?」
わたしが言うと、「ははーっ」と頭を下げた遙嫁ちゃんが、恭しそうに告げてきた。
「この部はたった今から、水桃織姫さまを崇め、奉る会合となりましたゆえ、重ねて祝言を申し上げます。うぐいすちゃん、織姫さまにクッキーを」
「キャンディー」
「はい?」
「わたしはキャンディーが食べたいわ。もしかしてこの部活にはないのかしら? そうすると困ったわねえ。七月の査定で部員が一人足りなくてこの部は解散ね」
「キャンディー! ただちに飴ちゃんを織姫さまのお口に!」
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