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遙嫁ちゃんにそう指示されたうぐいすちゃんは、思いのほか素直に頷き、きちんと包装を取り除いたキャンディーをわたしの口元に近づけた。うぐいすちゃんの指先に舌をつけて飴を口内に頬張ると、わたしは演技とはいえ素直に従ってくれる女の子たちが愛おしくなってきた。
「恵美さん、もう少し強くしてくれる? 実は最近肩が凝ってて……」
「りょーかいよん!」
女性らしさを醸し出す恵美さんもわたしの注文に合わせ、程良い力加減でわたしの肩をマッサージしてくれる。彼女の指は細くて柔らかく、触れられているだけでとても気持ち良い。わたしはさらに注文した。
「出来れば背中のほうもやってくれないかしら? 恵美さんの指気持ち良いわー」
「承知いたしましたわん!」
わたしはまさしく夢心地となっていた。そんな状況に異を唱えたのはわたしの左手をマッサージしてくれていた呂加ちゃんだった。
「って何だよこの部活は! いよいよわけがわからなくなってんじゃねえか!」
――もっともである。
わたしは、わたしの手から指を離した呂加ちゃんを見て言った。
「それなら、どうしてあなたは体操着なんかを着ているの? ここは運動部ではないでしょう?」
そう言うと呂加ちゃんは部長である遙嫁ちゃん、恵美さんとうぐいすちゃんの目を見て叫んだ。
「そうだよここは運動部じゃないよ! あたしはこの遙嫁に本物の心霊写真を見せてあげるからと言われてここまで来たんだ! 決して新入部員の手を揉むためじゃねえ!」
そこまで聞くと、わたしは遙嫁ちゃんから例の三枚の写真を受け取り、彼女に見せながら解説してあげた。見た当初こそ恐怖で縮こまっていた呂加ちゃんだが、昨日遙嫁ちゃんに言って聞かせたとおりの言葉を耳にすると、たちまちがっかりした様子となっていった。
「なんだよ! 全部偽物じゃねえか! わざわざフィールドホッケー部抜け出して来て損した!」
「……って呂加ちゃんは、幽霊部員ではないの?」
わたしは彼女がこの心霊研究会の部員であることを確かめるため、言を発った。
「いや、一応校則で掛け持ちも可能だから心霊部にも籍を置いているけどさあ、遙嫁のやつ毎度まいどあたしを怖がらせようと、ガセネタばかり見せてくるんだよなあ!」
呂加ちゃんの発言を聞き、遙嫁ちゃんが反発する。
「そう言って織姫ちゃんの解説がなければ、呂加ちゃんだって本気で怖がっていたくせにー」
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