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心霊写真―消える赤子―
――Invenite hortum veritatis.
謎1『第一章 水桃織姫』
わたしは霊を信じない。
ありふれた、つまらない日常に何を加えたら、わたしの人生は華やかなものになるだろう。恐怖へ傾ける愛嬌だろうか。不思議に対する好奇心だろうか。そのどちらにしても、わたしには不要だ。
聖羅女学院への初登校の日を迎えた。わたしはわくわくしていた。新しい日常、新しい環境に飛び込む自分自身は期待に満ち溢れていた。
明るい性格のわたしでも、やはり最初の一歩はためらうもので、同じ組になったクラスメイトと仲良くなれるのかが心配だった。何を隠そう、わたしは転校生なのだ。入学式から二か月も経った六月では、すでに交友関係はある程度の形を成し、自然相手がどのような人間であるのかもわかってくる。
個々の能力や性格ひいては序列関係まで、しち面倒くさい人間らしさが十二分に発揮され、人は慣れという恐ろしさに身を置くようになる。慣れはためらいを消し、同時に思いやりをも消してしまいかねない。わたしは集団から孤立することを何よりも慄れていた。
案の定わたしが自己紹介を終え、ひとり不安な心持ちとともに席へ着くと、わたしに話し掛けて来る者はまずいなかった。当たり前といえば当たり前で、生徒たちはせっかく築き上げた友人関係にわたしという異分子を入れようとはしなかったのだ。
転校初日の月曜日から数えて三日目の登校日、わたしはようやく人と話すことができた。相手は同じ寮の二階、空き部屋を一つ挟んだわたしの二つ隣に住む、女の子だった。彼女は寮生活に慣れないでいるわたしを見かねたのか、こんなことを言った。
「みずももさん……だっけ? みずももさん自分から話し掛けに行かないと友達できないよ? 私、同じ水星階に住む泉蒲遙嫁。二つ隣の者同士、仲良くしましょう。あなたの隣室は、たしか……空ちゃんだったよね? 秋昴空。ぽかーんとした子だけど、悪い子じゃないから、よろしくしてあげてね」
「う、うん!」
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