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「なー、もういい加減良いだろー? そろそろサウナ行こうぜー?」
お得意のエクスクラメーションサインも消えてきた様子なので、わたしは仕方なく彼女に合わせることにした。
「やれやれ……、それじゃあ勝負といきましょうか」
「お、おうよ」
お互いに水分補給をしっかりとおこない、審判はうぐいすちゃんが務めることになった。勝負は単純なもので、先にサウナルームから出たほうの負けだ。わたしたち三人がサウナ室に入ると、温度計は75℃を指していた。
「それじゃあゆっくりくつろぎましょう」
「うん」
すっかり覇気の失せた呂加ちゃん。傍目にも息が上がっているのがわかる。彼女に倒れられても困るので、わたしは子どもっぽい勝負を切り上げ、さっさとサウナ室から退出することにした。
「あーもう限界だわー。わたし先に出るわね」
三分もしないうちにそう言い、サウナルームの出口へ向かって行くわたし。うぐいすちゃんが後ろから付いてくる。
「おい、もう出るのか? 勝負はまだ始まったばかりじゃねえか」
ぐでーんとした呂加ちゃんはじっと座り、腰を上げようとしない。
「それでも良いのよ。明日も学校があるし、今日は早く寝たいの。それじゃあうぐいすちゃんとわたしは、先に脱衣所へ行ってるわ」
わたしはそう言い残し、サウナルームから浴室へ向かう一歩手前で足を止めた。
「そんなのずるいぞ! あたしを置いて行くなー!」
呂加ちゃんが走りながらこちらへ向かって来る。わたしは勝機を見逃さなかった。
「お先にどうぞ。レディーファーストよ」
「あっはい。これはご丁寧にどうも」
呂加ちゃんは先へ促してあげただけで、いとも容易くサウナ室から出てしまった。
「あ」
「ふふふ」
だましたなー! という呂加ちゃんの声が響く。わたしの足はまだしっかりとサウナ室の内側にある。
「うぃなー」
お人形さんを抱えたうぐいすちゃんが審判としての務めを果たす。こうして、あっという間に勝者が決まってしまった。
「残念だったわね。わたしの勝ちよ、おチビちゃん」
「うぐぐぅー」
歯を食いしばっている呂加ちゃんを眺めて、わたしはペットを獲得した。ちょうどその時、後ろから声が掛かる。
「何をしているの。少し退いてもらえる?」
わたしはサウナルーム入り口に突っ立っていたことを素直に謝り、彼女に道を譲った。
「あ、すいません」
「良いのよ」
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