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わたしは転校三日目にしてようやく誰かと話すことができて、とても嬉しくなった。秋昴さんはわたしに宛てがわれた寮、その二階の隣の部屋に住んでいた。打ち解ければ快活であると自負しているわたしは、はっきりと言えば人見知りだった。入寮する際に監督の先生と話した以来の長い会話に、わたしは緊張を禁じ得ない。
「さて、あなたに話し掛けたのは他でもない。我が部活に勧誘するためよ!」
「う、うん?」
はっきりとした口調で喋る泉蒲さん。わたしは自信に満ち溢れて止まない彼女のらんらんとした瞳を見つめては、途端にどぎまぎしてしまった。
「ぶ、部活?」
わたしがそう言うと、彼女は言った。
「そう! 我が部長を務める心霊研究会に、あなたを勧誘します!」
わたしは「心霊」という言葉を聞いて、たちまち引け目を感じた。わたしはそういったオカルティズムに対して、あまり興味を持つことができない。なぜなら、これほどまでに科学が発達した現代において、お化けや幽霊などという単語は、およそ時代遅れであると思うからだ。そもそも霊体とはプラズマの集合体。個体、液体、気体に続く第四の物質形態であり、物理学から答えを求めることができると、受け売りではあるが以前読んだ専門書に書かれていた記憶がある。
「えっと……わたしはそういうの、あんまり興味ないかな」
わたしも面倒くさいことにこれからの学生生活における時間を充てたくはないので、恭しく断った。彼女も関心のない人間を無理遣り入部させることはしないであろう。彼女は依然快活な意気とともに主張した。
「そう言うと思ったー! 私が勧誘するとみんな同じ答えを返すんだよね! よしわかった! もうあなたに決めました!」
「な……何が?」
わたしは戸惑った。彼女の揚々とした態度に気圧されたわけではなく、彼女の言わんとしていることを判じかねてたじろいだのだ。
「現在うちの心霊部の部員は四人。このままじゃ七月の査定の時点で廃部決定なの! あなたも知ってるでしょ? 部員が五人以上いない部は部として認められないの!」
「いや知らないけど。いま初めて聞いたよそんなこと」
「そう! あなたは転校生! だから知らなくても当然だよね! お願い! そういうことだから入ってくれない!?」
「どういうことなの?」
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