第1章

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 わたしは戸惑った。彼女の理路整然としない発言に気圧されたわけではなく、人の話を聞かない剛胆さにたじろいだのだ。って、あはは……。 「とにかく部員が必要なの! ねっ、試しに見学だけでも!」  こういうのをカリギュラ効果というのだろうか。わたしはどうやら押されれば押されるだけ引いてしまうタイプの人間らしい。クラスメイトに話し掛けられなければ寂しいと感じていたのに、こうして押しの強い人間と対面して、わたしは会話することを鬱陶しく思っていた。  自分でも自分の性格が面倒くさいと思う。それでもここで相手に合わせてしまえば、ひとたびにして泉蒲さんのペースに巻き込まれてしまうだろう。わたしは断固として辞退した。不安定なものに心を動かすつもりはない。 「何度も言うけど、わたしはお化けとかそういうのに興味はないの。不確かなものに時間を費やすくらいなら、勉強をしていたほうがまだマシよ」  わたしには部活に入る予定などなかったが、これで一つ候補が増えた。帰宅部でいたほうが、心霊研究会などよりも有意義な日々を送ることができそうだ。そう言うと泉蒲さんは言った。 「ちょっと待って。心霊は不確かなものじゃないよ。ちゃんと形容(かたち)を伴ってそこに存在しているの。証拠だってあるんだよ!」  わたしは首を傾げた。そうして彼女は自身のポケットから何枚かの写真を取り出しては、それをわたしに見せた。そう、いかにも心霊写真と呼ばれる類のものだ。まるで引き下がろうとしない泉蒲さんに、わたしはいよいようんざりしてきた。 「で? これがなあに? 悪いけど興味ないって言ってるでしょ? こういった写真はカメラの不調や光の反射で偶然、たーまたま撮れちゃうものなの。だからこれを見てこわーいとか騒いじゃうような子を勧誘すべきじゃなくて? ごめんね、わたしには力になれないわ」  わたしがそう言葉を返すと、まるで宝石を見つけたかのようなキラキラした瞳でこちらを見つめてくる泉蒲さん。やばい……何か面倒くさそうな予感……。 「あなた良いよー! それでこそ心霊研究会の部員にふさわしい! 私はかねがね、あなたのような人材を捜していたの!」  わたしのどこにそのような思惟を傾けているのかは知らないが、わたしは一人ヒートアップしていく泉蒲さんにどんどん気が引けていた。するとちょうど良いタイミングでチャイムが鳴る。  キーンコーンカーンコーン。
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