1人が本棚に入れています
本棚に追加
泉蒲さんは依然「ぐぬぬ……」と言いながらわたしの部屋へ入ろうとしてくる。なんなのだ……わたしも変な人に目を付けられてしまったようだ。これなら一人でいたほうがまだマシだった……。
「すべての謎は論理的根拠を伴って解明できる! うちの部ではオカルトをオカルトとして認めるのではなく、どうしてそのオカルトがオカルトとして成立しているのかを調べる部活なの! ねえ、どうか話だけでも聞いてくれない!? ねえったら……! わ、わかった! クッキーとホットチョコレートも付けるから! ねっ!?」
わたしはだんだん腕が疲れてきたので、一息に扉から手を放した。すると廊下側に向けて泉蒲さんが吹っ飛んだ。あ。最初からこうすれば良かったんだ。
泉蒲さんの手が離れたとあって、わたしはそのまま部屋の扉を閉め鍵を掛けることもできたがしかし、向かいの壁に頭を打ち付けて倒れている彼女に忍びなくなって、問い掛けた。
「話を聞くだけでも良いなら、少しだけ付き合ってあげても良いけど?」
そう言うと、子犬みたいにやって来て、わたしの脚に縋り付いてくる泉蒲さんがあった。
「うんうん! ようやくその気になってくれたんだねマイハニー!」
「誰がマイハニーだ。ちゃんとお菓子は付けてくれるんでしょうね?」
「もちろん! 喜んで出すよお姫さま!」
わたしは肩を竦めて廊下に出ると、泉蒲さんの手を取った。
「じゃあティーパーティーね。あなたの部屋に案内して」
「ラジャーです姫!」
――なんなのだ。
わたしたちは彼女の部屋に向かった。
『泉蒲遙嫁』とネームプレートが掛けられた部屋はわたしと同じ二階、部屋を出て左に二つ行ったところにあった。
お隣りのお隣り。先ほど学校で彼女が話していたとおりの配置だ。ちなみにその一つ左隣は『瀬竹群青』さんの部屋となっていた。
「さあ、ようこそー、私の楽園へー!」
泉蒲さんが自室の扉を開けると、とても女の子らしいファンシーな部屋が広がっていた。わたしはこの時はじめて他人の部屋に入ったことになる。しかし不思議とそんな気はしなかった。見覚えがあるといえば嘘になるだろうが、なぜだか知っているような気がしてしまったのだ。
「織姫ちゃんはそこに座ってねー! すぐにお菓子持ってくるからー」
「う、うん」
最初のコメントを投稿しよう!