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それは英語の歌詞の意味どころかおおよその内容さえ掴んではいないような、無心のムーンリバーだった。 こんなところでずいぶん気持ちが良さそうに歌うやつがいるものだと、燕は声のする方に目をやる。 するとそこには制服姿の女の子が1人、芝生にゆったりと腰を下ろして花かんむりを作っていた。 辺りにはしろつめくさ以外の花は見当たらないのに、少女の手の中にある花かんむりは、ピンクや黄色や薄紫や、春らしく美しい色彩で飾り付けらけていた。 燕は見るでもなしに少女の手元を眺めていたのだが、すぐにその色とりどりの花の出どころを察した。 花を編む少女の回りには男が3人、少女を真ん中に正三角形を描くように座り込んでおり、残りの1人の男が花を手に戻ってくると、どこかしらの頂点に座っている男が交代に立って行き、帰ってきた男が空いた場所に座るのである。 端から見れば、妙なまじないか変則的な鬼ごっこでもやっているのかと見えるような光景ではあった。男たちがなにくれとなく話しかけるのに、少女が延々と歌い続けるだけで返事をしないから、尚更。 変な集団だな、と、ひょいと少女の顔に目をやった燕はちょっと驚き、妙なまじないが行われる理由を飲み込んだ。
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