旅の準備をしよう

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 8万ゴールドをしっかり支払ったゴメスは満足げに自分が落札した物を受け取り、鑑定所から出ていった。 「くそぅ、あの安っぽい感じのヘルム……今度の劇のイメージぴったりだったのに」  一方、欲しかった商品の購入を逃したミコトもがっくりと肩を落としながら劇団のある方向へと静かに歩き去る。  クロイは使い道の無いガラクタを8万ゴールドに換え、ゴメスは自分が欲しかった商品を自分の宣言通りの値段で買い、ミコトは落札を逃したものの割高での買い物による損失から逃れることが出来た。  やり方は悪質なはずなのに結果だけを見ると誰も損をしていないように見えることがマシロには不思議だった。 「鑑定額5万のゴミが8万で売れる。競売の力はすごいだろ」  8万ゴールドが詰まった巾着を鑑定所内のテーブルの上に置き、自分の知略で勝ち取ったその金を愛おしそうに見つめるクロイ。  外見は小さな少年のはずなのに、その黒い瞳にはどこか大人の男を感じさせるような色気があった。 「……そういえば、まだちゃんとその口から聞いてなかったな」  やがて視線は金からマシロの顔へと向けられ、クロイは真剣な表情でこう告げた。     
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