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マシロはこの小さな人間の少年を信じることにした。
「改めてお願いしますクロイさん。ミューゼルの筆を、お母さんの筆を売ってください」
腰の前で両手を組み、深く頭を下げるとクロイはそんな彼女の顔の前に右手を差し出す。
「任せておけ。天才鑑定士であるこの俺様があんたの借金を跡形もなく消してやる」
「はい! お願いします!」
お互いに笑顔で見つめ合い、そして互いの手を握り合う。
それは鑑定士クロイ・ブラックと依頼人マシロ・トゥルーホワイトの間に確かな契約関係が生まれた瞬間だった。
「よーし、そうと決まれば善は急げだ! 行くぞマシロ」
クロイ鑑定所のドアが勢いよく開けられ、2人はまたもコーネリアの街の中へと繰り出す。
「行くってどこにですか?」
「旅の準備だよ! 自衛用の武器と防具、馬車と運転手、食い物と水もだ」
多額の入札が入る世界公式のオークションが次に開催されるのはコーネリアから南に離れた場所にある街サルナ。
モンスターや盗賊に襲われる危険がある壁の外を何の準備もせずに出ていくほどクロイは馬鹿ではない。
彼は先程儲けた8万ゴールドを使ってサルナ到着までに必要最低限の物を揃えようという考えだった。
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